公開日 2026.07.25 / 情報確認日 2026.07.25 / 執筆・編集:テクヒカ編集部
フォームからCRMへ登録でき、Slackにも通知が飛んだ。自動化が完成した日は、それだけで成功に見えます。厄介なのは数か月後です。API認証が切れ、作成者が異動し、通知だけが止まったとき、問われるのは構築時間ではなく「誰が履歴を読み、どこから戻せるか」です。
n8n・Make・Zapierは、課金の数え方だけでなく、失敗データの残し方や接続情報の引き継ぎ方も異なります。2026年7月25日に確認した各社の料金・ヘルプを基に、同じ業務でtask、credit、executionがどこまで増えるかを分解しました。月額の安さでは見えない、運用を続けられる条件から選びます。
| 製品 | 主な課金単位 | 2026年7月の入口 | 運用で先に決めること |
|---|---|---|---|
| Zapier | 標準アプリのtrigger・actionごとのtask | Freeは月100 tasks、Professionalは月19.99ドルから | app connectionの共有と退職時の移管 |
| Make | 通常はmodule action 1回ごとのcredit | Freeは月1,000 credits、Coreは月12ドルから | Incomplete executionsとTeamの所有者 |
| n8n | ワークフロー1回の起動ごとのexecution | Starterは年払い換算で月20ユーロ、月2,500 executions | Credential共有と技術保守の担当 |
Zapierでは、標準アプリへ接続するtriggerとactionが原則1 stepにつき1 taskです。Filter、Paths、Formatter、DelayなどZapier内蔵ツールのstepは0 task。MCPのtool callは1回2 tasksで、AI機能は種類により1、3、5 tasksと変わります。Freeは月100 tasks、Professionalは月19.99ドルからです。1件のデータに何step動くかを先に書き出すと、料金を読み違えにくくなります。料金の全体像はZapierの料金と運用上の注意点でも整理しています。
上限を超えた分を従量で処理するPay-per-task billingは、対象プランでは契約tasksの合計3倍まで使えます。2026年7月15日以降に始まる請求期間から新しい月次単価が適用されますが、単価はアカウントのBilling and usage画面で確認する方式です。上限超過を自動で許すかはownerが管理します。
Makeはcreditを購入し、通常の非AIアプリでは1 operationが1 creditです。検索で10件を見つけ、後段が10件を個別に更新すれば、その更新だけで10 credits。ポーリング型triggerは新着ゼロでも確認時に1 creditを使い、公式例では5分間隔なら1日288 credits、30日で8,640 creditsです。Freeは月1,000 credits、Coreは月10,000 creditsで12ドルから。待ち時間を短くするだけで消費が跳ねるため、即時性が必要な処理かを分けて設計します。
n8nは、ステップ数ではなくワークフローの起動をexecutionとして数えます。途中に20ステップあっても1回の起動は1 executionです。Starterは年払い換算で月20ユーロ、月2,500 executions、ステップ数は無制限。分岐や変換が多い処理には向きますが、外部AI APIのトークン料金、接続先SaaSのAPI上限、セルフホスト時のサーバーと保守費用は別に残ります。
Google Workspace、Slack、Notion、Salesforceなど、すでに複数SaaSを使っている会社が、フォーム受付から通知までを早くつなぐならZapierが有力です。非エンジニアでもtriggerとactionを順番に置きやすく、連携先の豊富さが「API仕様を読む時間」を減らします。CRMへのリード登録を自動化する、Slackへの通知を自動化するといった定番作業を短期間で動かしたい場面に合います。
一方で、外部フォームのtrigger、重複確認、CRM登録、担当者検索、Slack通知、メール送信を並べれば、標準アプリに接続するstepごとにtaskが積み上がります。再実行で成功済みstepまで再び走れば、その分もtask対象です。Zapの名前に「対象業務・所有部署・停止時連絡先」を入れ、月次でtask上位のZapを確認しておくと、後付けしたstepの費用を追えます。
MakeのScenario Builderは、Router、Filter、Iterator、Aggregatorを使い、データがどの枝へ流れ、どこで件数が増えたかを視覚的に追えます。営業リードを地域別に分け、条件に応じてCRM・メール・Slackへ流す処理なら、後から見た人も構造を追いやすい設計です。エラーハンドラーで再試行や代替処理を組めますが、失敗データをIncomplete executionsへ保存する機能は初期状態で無効です。公開前に有効化しないと、人が後から再開する前提が崩れます。
ただし、画面上のモジュール数だけではcreditを読めません。10件のデータを1つの検索で取得しても、次のactionが10件を個別処理すれば10 creditsです。AI機能も、MakeのAI Providerを使う場合はoperationに加えてトークン量などでcreditが変動します。自社のAPIキーを接続する有料プランではMake側のoperationとAI事業者側のトークン料金を別々に払うため、見積もりを二重に持つ必要があります。
n8nはHTTP Request、Code、Webhook、AI Agent系ノードを組み合わせ、標準コネクタにないAPIや社内システムまで扱いやすい設計です。処理が20ステップになっても1回の完走は1 executionなので、分岐・整形・複数API呼び出しが多いワークフローでは料金の見通しを立てやすくなります。AI分類後に人の承認を挟み、結果に応じて複数システムを更新する用途は、n8nでAIワークフローを組む場合の考え方と相性があります。
ただし、自由度は保守責任とセットです。Cloudを選べばサーバー管理は減りますが、複雑な式、JSON、API認証、失敗データの再投入を読める人は必要です。セルフホストなら、更新、バックアップ、データベース、暗号化キー、ログ、脆弱性対応まで自社の仕事になります。専任者のいない会社が「月額を下げるため」だけにセルフホストへ移ると、請求書には出ない工数が増えます。
ここでは月額を無理に円換算せず、同じ業務がどの課金単位を通るかだけを見ます。基本式は「月間起動回数 × 1回あたりの課金単位 × 再試行や追加処理」です。ただしMakeのAI機能や外部AI APIのように、トークン量が別計算になる処理は分けて見積もります。
Zapierでは、標準アプリのフォームtrigger、CRM登録、Slack送信が各1回成功すると、基本はリード1件あたり3 tasksです。重複検索を足せば4 tasks。Zapier Formsのような内蔵ツールをtriggerに使う場合は、そのstepは0 taskなので数が変わります。MakeでWebhook、CRM登録、Slack送信が各1回動くなら通常は3 creditsが目安です。n8nでは一連の起動が1 execution。大量リードでn8nが有利に見えても、CRMのAPI制限や同時実行数は別枠です。
Zapierは標準アプリからの取得とNotion更新がそれぞれtaskになり、集計をFormatterなど内蔵ツールだけで行うstepは0 taskです。Makeは毎日1回のスケジュールならtrigger分は月約30 creditsですが、5分ごとに空振り確認するとtriggerだけで月8,640 credits。n8nなら毎日1回で月約30 executionsです。日次で足りる集計を5分間隔にしても業務価値は増えません。Notionを業務データの受け皿にするなら、更新前にどのデータを正とするかも決めます。
Zapier MCPは成功tool callごとに2 tasksです。通常のZapでAI機能を使う場合は選ぶモデルや機能のtask rateも確認が要ります。Makeは自社のAI Providerを使うとoperationとトークン量に応じてcreditが変わり、有料プランで自社APIキーを使う場合はMakeのcreditとAI事業者のトークン料金が分かれます。n8nはワークフロー全体で1 executionでも、OpenAIやAnthropicなどのAPI料金は別です。3製品とも、AIを加えた瞬間に「自動化ツール側」と「モデル側」の二つの使用量を見る必要があります。
ツール選びより重要なのが、運用台帳です。最低限、次の4項目を1ワークフローごとに残します。
| 決める項目 | 公開前に書く内容 | 避けたい状態 |
|---|---|---|
| 所有者 | 業務責任者、修正担当、休暇時の代理 | 退職予定者の個人アカウントだけで稼働 |
| API認証 | 接続元、権限範囲、更新日、再認証手順 | 誰のGoogle・Slack・CRM資格情報か不明 |
| エラー通知 | 通知先、緊急度、確認期限、一次対応 | 作成者だけにメールが届き、部署は停止に気づかない |
| 人の代替手順 | 未処理一覧、手動入力先、再実行方法、重複防止キー | 復旧後に全件再送し、CRMや通知が二重になる |
ZapierのTeam/EnterpriseではZapとapp connectionを別のmemberへ移管できます。ただしCatch Hookを使うZapは、ownerを変えるとWebhook URLも変わります。退職者の削除前に送信元のURLまで更新しないと、移管済みなのに受付だけ止まります。MakeではScenario、Connection、WebhookなどがTeamに所属し、別Teamへ移動できません。細かなrole管理はTeamsプラン以上が前提です。n8nではWorkflowとCredentialの共有を分けられますが、Workflowのeditorは、その中で使われているCredentialを明示的に共有されていなくても実行に使えます。編集権限を渡す相手まで含めて設計が必要です。
復旧方法も揃っていません。MakeのIncomplete executionsは、失敗したmoduleから同じ設定で再試行できますが、論理エラーや設定不備は修正してから処理します。n8nは失敗したexecutionを、現在保存されているWorkflowか、実行当時のWorkflowで再試行できます。一方、Workflowを削除すると関連するexecution履歴も消えます。Zapierは失敗stepだけを再実行すれば成功済みstepを飛ばせますが、Zap全体を再実行すると成功済みtaskも再計上されます。どの製品でも、CRMの一意キーや処理済みIDを残してから再実行しないと、復旧が二重登録を生みます。
1. 使っているSaaSが標準連携にあり、非エンジニアだけで早く始めたい
まずZapierを確認します。1件あたりの成功actionが少なく、Team運用の予算を持てるなら、構築時間を短くしやすい選択です。
2. 分岐、データ整形、例外処理を画面で追い、サーバー管理は避けたい
Makeが合います。ポーリング頻度、bundle数、AI creditを公開前に見積もり、Scenarioごとの使用量を監視できる担当者を置きます。
3. 独自APIやAIを多段で使い、技術担当が保守できる
n8nを検討します。高ステップ処理ではexecution課金が読みやすく、セルフホストも選べますが、運用責任まで自社へ戻る点を含めて判断します。
4. 直す人も通知先も決まっていない
まだツールを選ぶ段階ではありません。先に業務責任者と手動の代替手順を決め、1本だけ小さく公開します。
マーケティングや営業企画が主体で、Google Workspace、Slack、CRMなどの定番SaaSを少ないactionでつなぐチームです。初期構築の速さを優先し、task使用量を月次で確認できるなら強みが出ます。反対に、1件ごとのactionが多い大量処理、標準連携にないAPI、複雑なデータ変換が中心なら、作りやすさの代わりにtaskと保守手順が膨らみます。
業務担当者がフロー図を見ながら分岐やデータ変換を調整し、サーバーは持ちたくないチームです。エラーの枝を画面で見せたい、処理件数の増え方をScenario単位で追いたい場合に合います。反対に、1〜2 actionの単純連携しかなく、creditとbundleを確認する担当も置けないなら、Zapierの方が説明しやすいことがあります。
API、JSON、Webhookを扱える人がいて、AI処理や社内システムを含む多段ワークフローを管理したいチームです。データ配置やセルフホストを選べることに価値がある場合も候補になります。反対に、兼任IT担当がすでに手いっぱいで、アップデート、ログ、バックアップ、認証を引き受けられないなら、セルフホスト版は避けた方が現実的です。n8n Cloudを使っても、Workflow設計を読める人は残ります。
標準アプリに接続するtriggerは1 taskです。標準アプリのactionも1 stepにつき1 taskですが、Filter、Paths、Formatter、Delay、Zapier FormsなどZapier内蔵ツールのstepは0 taskです。見積もりでは、外部アプリへ接続するstepと内蔵stepを分けます。
失敗データを残して再試行しやすくはなりますが、それだけで二重登録は防げません。失敗moduleより前の処理結果と接続先を確認し、CRMの一意キーや処理済みIDで重複を拒否する設計が必要です。なお、Incomplete executionsの保存は初期状態で無効です。
十分ではありません。Zapierではapp connectionも移管し、Catch Hookを使うZapはowner変更後のWebhook URLを送信元へ反映します。Makeの資産はTeamに所属するため、個人だけでなくTeamとroleを確認します。n8nはWorkflowのeditorが中のCredentialを実行に使える点まで含め、権限を見直します。
はい。n8nはステップ数ではなく、ワークフローを起動した回数でexecutionを数えます。ただし、外部AI API、接続先SaaS、セルフホスト環境の費用と制限は別です。execution数だけを総コストにはできません。
以下は本文の料金、課金単位、復旧、権限に使った公式資料です(すべて2026年7月25日取得)。
導入後に残るのは、デモの見栄えではなく復旧手順です。通知を受ける人、再開する場所、二重登録を防ぐキー。この3点をチームで書ける製品なら、作成者が不在でも止まりっぱなしになりません。