公開日 2026.07.22 / 最終更新 2026.07.25 / 執筆・編集:テクヒカ編集部
DeepSeek、GLM、Kimiの現行モデルはいずれも100万トークン級の長文処理とAgent能力を掲げています。しかし導入判断で先に見るべきなのは、公式アプリの有無、外部Agentとの接続、画像入力、操作権限、入力データの扱いです。
2026年7月25日に確認できる対象はDeepSeek V4-Pro/V4-Flash、GLM-5.2、Kimi K3です。各社の公式発表、API仕様、モデルカード、Agent製品、データ利用条件を突き合わせ、日々の仕事で差が出るところに絞りました。
3社の違いを一言で表すと、DeepSeekはモデルを外部ツールへ供給する会社、GLMは開発Agentの作業台まで用意する会社、Kimiは開発以外の知識作業まで公式Agent製品へ広げる会社です。1Mコンテキストやパラメータ数より、この入口の違いが日々の運用に響きます。
| 判断項目 | DeepSeek V4 | GLM-5.2 | Kimi K3 |
|---|---|---|---|
| 公式の主な入口 | DeepSeek Chat、API | ZCode、ZCode Agent、API、Coding Plan | Kimi Web/App、Kimi Work、Kimi Code、Kimi Claw、API |
| 公式Coding Agent | 専用アプリは確認できず。外部Agent接続が中心 | ZCode Agent | Kimi Code(CLI/VS Code) |
| 画像をモデルへ直接入力 | V4 APIの中心はテキスト | GLM-5.2はテキスト。視覚は別モデルやMCPを併用 | ネイティブ対応 |
| 向く仕事 | 低単価の抽出、分類、コード処理、独自Agent基盤 | 大規模リポジトリ、長時間の実装・検証 | 画像混在の調査、資料作成、ローカルファイル操作 |
| 選ばない条件 | 公式Agentアプリまで一社で揃えたい | 画像中心、または短い定型処理だけ | テキスト大量処理の単価を最優先する |
DeepSeek V4は2026年4月24日にPreviewとして公開され、V4-ProとV4-Flashの2本立てです。どちらも1Mコンテキスト、最大384K出力、思考/非思考モード、JSON出力、Tool Callsに対応します。Proは1.6T総パラメータ・49B active、Flashは284B総パラメータ・13B active。Flashを大量処理に使い、判断が難しい案件だけProへ送る構成を取りやすいのが特徴です。
2026年7月25日時点のAPI価格は、100万トークン当たりV4-Flashが入力$0.14、出力$0.28、V4-Proが入力$0.435、出力$0.87。キャッシュ命中時の入力はさらに低く設定されています。規程から条番号を抽出する、問い合わせを分類する、リポジトリ内の定型修正候補を洗い出す、といった回数が多く、結果を機械的に検査できる仕事では強い価格設計です。
DeepSeekの公式ドキュメントがAgent利用先として案内するのはClaude Code、OpenCode、OpenClawなどの外部ツールで、専用Coding Agentではありません。接続手順は具体的ですが、第三者ツールの有効性や安全性を保証しない旨も記載されています。モデルを差し替える前に作業台を選び直すなら、AI開発ツールを差分確認と戻しやすさで選ぶ基準も参考になります。
DeepSeek V4が合うのは、すでに使いたいAgentが決まっているチームです。Claude CodeやOpenCodeの操作環境を残してモデル費用を抑える用途には合理的ですが、権限管理までDeepSeekが提供するわけではありません。
なお、従来のdeepseek-chatとdeepseek-reasonerは2026年7月24日に廃止されました。既存実装を移す場合は、料金差だけでなくV4の新しいモデルID、出力上限、同時実行数を確認する必要があります。
GLM-5.2は2026年6月16日公開のテキストモデルで、公式モデルカードでは753Bパラメータ、MITライセンス、1Mコンテキストを掲げています。Z.AIが強調するのは、単に巨大な入力を受け取ることではなく、コードAgentが数時間から数十時間にわたって計画、編集、コマンド実行、検証を続けても目標を失いにくくすることです。
その能力を実際の操作へ落とす公式アプリがZCodeです。ZCode Agentはワークスペース、参照ファイル、Gitブランチ、コマンド結果を同じタスクへ保持し、Plan Mode、Confirm Before Changes、Auto Edit、Full Accessなどの実行モードを切り替えられます。プロジェクト規約はAGENTS.mdへ置き、変更禁止箇所、テストコマンド、命名規則、依存追加の条件を毎回のタスクへ渡せます。
ここがDeepSeekとの明確な違いです。DeepSeekは好きな外部Agentへモデルを供給する自由度が高い一方、GLM-5.2はZCodeとの組み合わせで長時間タスクの状態管理まで製品化しています。既存のClaude CodeやOpenCodeを使いたい場合はGLM Coding Planから接続でき、1M版はモデル名GLM-5.2[1m]として案内されています。
APIの従量料金は100万トークン当たり入力$1.40、キャッシュ入力$0.26、出力$4.40です。Coding Planは別契約で、利用量の係数はピーク時間3倍、オフピーク2倍、2026年9月末まではオフピーク1倍。定額でも時間帯で枠の減り方が変わるため、API単価とプラン枠を混同しない方がよいでしょう。
GLM-5.2自体はテキストモデルです。画像を扱う工程ではVision MCPやGLM-5V系を組み合わせます。開発作業が中心なら一貫した設計ですが、画像とコードを同じモデルへ直接渡したい案件ではKimi K3との違いが出ます。
Kimi K3は2026年7月16日公開。2.8Tパラメータ、ネイティブ画像理解、1,048,576トークンのコンテキストを備え、KimiのWeb/App、Kimi Work、Kimi Code、Kimi API、Agent Swarmへ展開されています。完全ウェイトは7月27日までの公開予定で、7月25日の確認時点ではまだ予定です。「公開予定」と「現在すぐ自社環境へ置ける」を分けて評価します。
公式製品は用途別です。調査・文書・表・スライドはKimi Web/App、ローカルファイルとデスクトップ操作はKimi Work、コード編集とコマンド実行はKimi Code、常時動く自動化はKimi Claw、並列処理はK3 Swarm/Agent Swarm。公式ヘルプではKimi Agentが20以上のツールを使い、Swarmは最大300のサブAgentを調整するとしています。
ただし、モデルの上限がそのまま全製品の入力枠になるわけではありません。標準のKimi Agentは公式ヘルプ上で256K文字、Kimi CodeのK3 1Mは上位会員向けです。K3-256Kは使用枠の消費が約半分、K3 1Mは約2倍と案内されています。長文を買うなら、使う製品と会員階層まで確定させる必要があります。
この構成が効くのは、スクリーンショット、画像化PDF、Web情報、Excel、スライドが一つの案件に混ざる場合です。OCR、ブラウザ操作、コードAgent、Office出力を別々に組む工数を減らせるなら、API単価以外の価値が出ます。
逆に、文章の抽出や分類を大量に回すだけならKimi K3は過剰です。K3は常時推論する設計で、APIは100万トークン当たり入力$3、キャッシュ入力$0.30、出力$15。DeepSeek V4より大幅に高く、単価だけで選ぶモデルではありません。
あります。ただし、一般的な文章処理やコード修正で自動的にKimi K3が勝つわけではありません。OpenAIのGPT-5.6 Lunaは100万トークン当たり入力$1、出力$6、Terraは入力$2.50、出力$15です。Kimi K3は入力$3、出力$15なので、272K以下の通常リクエストではTerraとほぼ同じ出力単価で、入力はKimiの方が高くなります。Lunaはさらに安価です。
OpenAIは272Kを超える入力で、リクエスト全体の入力が2倍、出力が1.5倍になります。この長文加算が入るとTerraは入力$5・出力$22.50、Solは入力$10・出力$45となり、Kimi K3の$3・$15が相対的に安くなります。それでもLunaは加算後も入力$2・出力$9なので、価格だけならKimi K3は最安ではありません。
| モデル | 入力/1M | 出力/1M | 長文時の注意 |
|---|---|---|---|
| Kimi K3 | $3.00 | $15.00 | 1Mコンテキスト。キャッシュ入力は$0.30 |
| GPT-5.6 Luna | $1.00 | $6.00 | 272K超は入力$2、出力$9 |
| GPT-5.6 Terra | $2.50 | $15.00 | 272K超は入力$5、出力$22.50 |
| GPT-5.6 Sol | $5.00 | $30.00 | 272K超は入力$10、出力$45 |
それでもKimi K3が候補に残るのは、第一にネイティブ画像と1M長文を同じモデルで扱えること、第二にWeb、デスクトップ、CLI、VS Code、クラウド常駐、並列Agentを公式製品で揃えていること、第三に公開ウェイトを前提に検証や将来の自社運用を計画できることです。すでにOpenAI Responses APIのWeb検索、File Search、Hosted Shell、MCPなどを組み込んでいるなら、移行コストまで払ってKimiへ変える理由は弱くなります。反対に、API開発をせずKimi WorkやAgent Swarmで成果物まで完結させたいなら、トークン単価だけでは測れません。
3社とも、一般向けチャットとAPI/業務契約を同じ条件で扱ってはいけません。2026年7月25日に確認した公式文書では、入力の学習利用、保存場所、初期設定が製品経路ごとに分かれています。社内コードや顧客資料を扱うなら、モデル性能より先に利用経路を固定します。
| 利用経路 | 公式文書で確認できた扱い | 実務での確認点 |
|---|---|---|
| DeepSeekのサービス/API | 入力やファイルを収集し、サービス改善やモデル学習に使う場合があります。学習利用のオプトアウト手段があり、収集情報は中国本土のサーバーに保存するとしています。 | 一般設定の学習利用を確認し、中国本土での保存を組織要件と照合する。 |
| ZCode/Z.ai API | ZCodeは会話を記録しますが、Optimization Programは初期状態でオフ。Z.ai APIのDPAは業務コンテンツを保存せず、明示合意なしに学習へ使わないとしています。 | ZCodeの設定とAPI契約を分け、処理地域や組織のDPAを確認する。 |
| Kimi一般サービス/API | 一般向け規約はサービス改善やモデル最適化への利用を含みます。一方、Kimi APIは入出力を学習に使わず、学習目的で永続保存しないと明記しています。 | Kimi WorkやWebの扱いをAPI方針で代用せず、機密用途はAPI/業務契約の条件で判断する。 |
「学習に使わない」だけでは、ログ保持、障害調査、処理地域、委託先、削除手続きまで確定しません。導入時は該当製品の管理画面とDPAを残し、一般向けチャットの規約をAPIへ、APIの規約をデスクトップ製品へ読み替えないことが重要です。
1Mへ投入できることと、必要情報を最後まで正確に使えることは同じではありません。指示、ファイル、ツール結果、生成コード、エラーログが同じ枠を使います。リポジトリや規程集を無選別に詰め込むと、重要な禁止事項が埋もれます。
最初に索引を作り、対象ファイル、変更禁止範囲、判断基準、完了条件を短い文書へ分ける方が安定します。コードAgentならAGENTS.mdへテストと禁止操作を置きます。書く内容に迷う場合は、AGENTS.mdに残すべき項目と書き方で役割を整理できます。1Mは「全部入れる許可」ではなく、長い工程の状態を維持する余裕として使う方が合理的です。
モデルだけを差し替えた場合、ファイル編集、確認ダイアログ、Git差分、MCP、セッション復旧はClaude CodeやOpenCode側の仕様です。DeepSeekの専用Agentへ移行したわけではありません。ツール側の問題をモデル変更で直そうとせず、Agentアプリの設定とモデル品質を分けて評価します。
長時間動けるモデルほど、曖昧な目標では善意の追加修正が増えます。ZCodeのPlan ModeまたはConfirm Before Changesを使い、変更対象、変更禁止、実行可能なコマンド、完了判定を先に決めます。日常的な小修正までMax思考と1M版へ寄せると、速度と枠を浪費します。
KimiのAgent製品は調査から成果物まで進められる反面、目的が曖昧だと検索範囲と制作範囲が広がります。対象期間、使用可能な情報源、引用必須の数値、作ってよいファイル、公開前に人が確認する箇所を指定します。並列Agentは作業量を増やせますが、最終的な根拠確認まで自動で不要になるわけではありません。
DeepSeek V4を選ばない方がよいのは、公式のデスクトップAgentやIDEまで一社で揃えたい場合です。APIは安価ですが、日常の操作環境は外部ツールへ依存します。画像を含む調査や資料作成を一つのモデルで完結したい場合も、別の視覚処理が必要です。
GLM-5.2を選ばない方がよいのは、短いQ&A、分類、要約を大量に回すだけの場合です。長時間開発向けの設計とZCodeの価値を使いません。画像中心の業務でも、GLM-5.2単体では完結しません。
Kimi K3を選ばない方がよいのは、テキストAPIの単価が最重要の場合です。DeepSeek V4やGPT-5.6 Lunaの方が安く、Kimiの公式Agent製品を使わないなら価格差を回収しにくいでしょう。また完全ウェイトが必要な組織は、予定日後の公開内容とライセンスを確認してから判断する必要があります。
3モデルのどれにもこだわらない選択もあります。既にOpenAIのResponses API、File Search、Web Search、Hosted Shell、MCPで業務フローを構築しているなら、GPT-5.6 LunaやTerraを継続した方が移行工数を抑えられます。新モデルへ乗り換える理由は、ベンチマークの数点差ではなく、現行工程のどの手作業が消えるかで説明できる必要があります。OpenAI側のモデル構成はGPT-5.6のモデル選びガイドで整理しています。
2026年7月25日時点で、DeepSeekの公式ドキュメントは専用Coding Agentアプリではなく、Claude Code、OpenCode、OpenClawなどへのAPI接続を案内しています。DeepSeek Chatは公式サービスですが、ZCodeやKimi Codeのような開発専用Agentとは役割が異なります。
ZCodeはGLM-5.2向けの公式Agentで、Goal Mode、実行モード、AGENTS.md、Gitブランチを統合します。Claude CodeへCoding Planで接続した場合、UIと権限管理はClaude Code側の仕様です。
テキストAPIの安さだけならLunaが有利です。Kimi K3を選ぶ意味が出るのは、ネイティブ画像、Kimi Work、Kimi Code、Kimi Claw、Agent Swarm、Office成果物まで含む公式製品群が工程を短くする場合です。それらを使わないなら価格差を正当化しにくくなります。
学習利用の有無だけでなく、利用経路、保存期間、処理地域、削除手続き、DPAを確認します。DeepSeekは一般方針がAPIにも適用され、Z.aiとKimiは一般向け製品とAPIで条件が分かれます。社内利用ではAPI/業務契約の文書と実際の管理画面をセットで残してください。
2026年7月25日の確認時点では、まだ予定です。公式ヘルプは完全ウェイトを7月27日までに公開すると案内しています。公開後も2.8T規模のモデルを小規模なPCで実用運用できるとは限らず、必要なGPU、量子化、1M時のメモリと速度を別途評価する必要があります。
本文の料金、提供範囲、データ条件は上記ページの2026年7月25日時点の表示に基づきます。Kimi K3の完全ウェイトだけは、同日の時点で7月27日までの公開予定であり、公開済みの事実としては扱っていません。